鸞山 · SaZaSa · 一つの集落の物語
歩く樹
映画『アバター』の原風景。宮崎駿が歩いた森。布農族が20年かけて買い戻した、ある一族の故郷。
2026-05-26 · 6分で読めます
台東市から国道9号線を北へ40分。鸞山(らんざん)で左折。道は森の中へと上っていきます。
電気はない。コンクリートもない。商店もない。携帯電波もない。
ここに住むのは布農族の人々 ── 鸞山部落(SaZaSa)。樹がまだ歩いている場所です。
森を買い戻した男
20年前、**阿力曼(アリマン)**は鸞山部落の布農族リーダーでした。
彼は開発業者が祖先の森に目をつけるのを見ました。許可証が誰かの手に渡るのを見ました。ブルドーザーが近づいてくるのを見ました。
そして彼は誰も予想しなかったことをしました ── 銀行に行き、自宅を担保に融資を借り、一筆ずつ森を買い戻したのです。
20年間、彼と部落の人々はその借金を返し続けました。ホテル、テーマパーク、電力会社の申し出をすべて断りました。一本の道路も造りませんでした。
森が生き延びたのは、一人の男がそれを売ることを拒んだから。
「歩く樹」とは
鸞山の森に生える**白榕(Ficus benjamina)**は、枝から気根を地面に降ろします。気根は土に達すると新しい幹になります。何十年もかけて、一本の樹は幹だらけの森になる ── まるで何百年もかけてゆっくりと大地を歩いているかのように。
鸞山のガジュマルの中には樹齢300年を超え、気根が直径1メートル近くあるものもあります。
2010年、『アバター』の監督ジェームズ・キャメロンが訪れました。 彼は「この森はパンドラの魂の樹のようだ」と言いました。2013年、宮崎駿が訪れました。 地元の人によれば、彼は長い間沈黙したあと、ようやく口を開いたそうです。
しかし最も大切な訪問者は有名な人ではありません。森を尊重して静かに来て、聞いて、何も残さずに帰る人 ── それが最も大切な訪問者です。
SaZaSa ── 「いのちが栄える場所」
布農語で、SaZaSaとは:
「サトウキビが高く伸び、動物が活発で、人々が幸せに生きる場所」
これは地名ではなく、「あるべき」場所の姿の描写です ── そしてそれを生かし続けるために阿力曼の部落が働いてきた約束です。
鸞山では、布農族の人々が以下を守り続けています:
- 元祖の粟畑(部族の主食)
- 燻製小屋(魚と肉の保存)
- 祖霊崇拝の石壇
- 石板屋(布農族の伝統建築)
鸞山森林文化博物館を通じてここを訪れる人は、部族の人々のガイドで森を歩きます。何を見せ何を見せないかは、彼らが決めます。
なぜ「電気を引かない」のか
なぜ森に電気を引かないのかと尋ねられたとき、阿力曼はこう答えました:
「電気を引けば、冷蔵庫が来る。冷蔵庫が来れば、魚を燻製しなくなる。燻製しなくなれば、燻製小屋は使われなくなる。燻製小屋がなくなれば、燻製しながら歌う唄を忘れてしまう。その唄を忘れたら、布農族であることの一部が死ぬ。」
「電気がない」のは貧しさではありません。文化を生き延びさせる、明確で持続する選択です。
訪問の方法(と知っておくべきこと)
鸞山森林文化博物館の訪問は予約制で、1日に受け入れる人数を限定しています。
| 項目 | 詳細 | |---|---| | 費用 | 1人あたりNT$ 1,500〜2,500(プログラムによる) | | 所要時間 | 半日(4時間)または1日(8時間) | | 含まれるもの | 部族ガイド、昼食(布農族の伝統料理)、森林散策、伝統的な火起こしの実演 | | 予約 | 最低2週間前(繁忙期はもっと早く) | | 言語 | 中国語が基本。英語ガイドはたまにあり、要事前手配 |
訪問者の守るべき礼儀(非常に重要):
- ドローン、電動スクーター、大音量のBluetoothスピーカー禁止
- 族人の撮影は必ず事前許可、祖霊空間は撮影禁止
- 出されたものは全て食べる、粟酒も含めて(断るのは失礼)
- 持ち込んだものは全て持ち帰る ── 有機ゴミも含めて
この場所があなたに与えてくれるもの
SNS用の背景を期待して来るなら、がっかりするかもしれません。
しかしGoogleで検索できないものを学びに来るなら ── 帰る時にはあなたは変わっています。
森は、現代生活がほとんど要求しないある種の忍耐を教えてくれます。ゆっくり歩くこと。樹が成熟するのに100年かかるということは中途半端な思考ではなく完成した一文だということ。電気を使わないと選んだ一族は多くの企業よりも長期的な計画を立てているということ。
それが鸞山が提供するもの。眺めではなく、見方そのもの。
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出典
写真はイメージです。現地撮影に随時差し替えます。