台東スロートラベル
温泉の足湯、立ちのぼる湯気(実景・交通部観光署のオープンデータ)

知本 · 養生温泉 · ゆっくりと流れる、ひとつの物語

何もしないこともまた、ひとつの到着

東台第一の景。アルカリ性炭酸の「美人の湯」、森の朝霧、そして一壺の鹿野紅烏龍 ―― 知本は、台東がそっと立ち止まり方を教えてくれる場所。

Sam Hu·更新 2026-05-29 · 5分で読めます

台湾には、まずロープを伝う術を覚えてからでないと浸かれない温泉があります。そして、ちょうどその逆もある ―― あなたは何もしなくていい。ただ自分を委ねればいいのです。

後者を知本温泉といいます。台東市街から南へ車で約30分、森と山々に抱かれた知本渓谷のなかにあります。日本時代の頃から、ここは台東でもっとも名高い温泉郷で、年配の人々はこの地に大きな名を贈りました ――「東台第一の景」と。

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東台第一の景

知本の湯は、中央山脈の奥深くから湧き上がってきます。

台東観光旅遊網によれば、知本温泉はアルカリ性炭酸泉で、無色・無臭・清らか、湯温は百度近くにまで達し、ミネラルを豊かに含みます ―― 浸かったあとに肌がなめらかになることから、人々はこの湯に美しい別名を授けました。「美人の湯」です。

北部の温泉のように硫黄の匂いをまとうこともなく、野渓温泉のように冒険を強いることもありません。知本の温泉は飼い馴らされ、世代から世代へと手をかけて守られてきました ―― 渓谷の両岸には温泉旅館が軒を連ね、日本時代の木造旅館から今日の温泉ホテルまで、この渓谷はおよそ百年にわたって湯を湛えてきたのです。

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何もしなくていい

私たちのこの時代は、「予定を組む」のがとても得意です。休暇でさえ、名所を詰め込み、歩数を稼ぎ、カメラを撮り尽くそうとします。

けれど知本は、こう思い出させてくれます ――何もしないという、ひとつの到着がある、と。

荷物を部屋に放り込み、浴衣に着替え、湯気を立てるあの湯のなかへ歩み入る。湯のぬくもりが肩のこわばりをゆっくりと溶かし、谷あいの風が窓の外から、森の匂いを連れて入ってくる。ふと気づくのです ―― 自分が初めて、次の予定を待っていない、ということに。

最良の温泉が洗い流すのは、疲れではありません。やらねばと思い込んでいた、あの数々のことなのです。

—— 知本の渓谷

だからこそ知本は、二人で訪れるのにふさわしい場所です。急がず、混まず、誰かの旗のあとを追う必要もない ―― ひとつの湯、ひとつの心づくしの食事、そして自然に目覚める一つの朝。それがすべての行程です。

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一壺の紅烏龍の午後

湯から上がると、台東の人は一壺のお茶を添えます。知本から北へほど近いところに、鹿野(鹿野) ――紅烏龍の故郷があります。

紅烏龍は鹿野の看板です。半発酵、琥珀色の湯、口に含めば熟れた果実と蜜のような甘い香り、そして喉の奥に戻ってくる甘み。地元の福鹿茶とともに、縦谷が味覚に贈った二つの贈り物です。知本の多くの温泉ホテルでは、午後のお茶にそのまま紅烏龍を茶菓子に添えます ―― 湯あがりのほどけた心地に、茶湯のあたたかさを重ねる。それは、人生の機微を知る旅人がもっとも心得た、午後の愉しみ方なのです。

春の谷にひらく薄紅の花の木々

急ぐことはありません。一壺の紅烏龍は、午後をかけてゆっくりと味わえます。霧が山の頂から下りてきては、また昇ってゆくのを眺めながら。

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森はすぐ隣に

知本にあるのは、温泉だけではありません。

渓谷の奥には知本国家森林遊楽区があります ―― 低海抜の原生林が広がり、百年を経た**白榕(白榕/ベンガルボダイジュ)**の気根が簾のように垂れ、歩きやすい遊歩道と森林浴の場が広がっています。知本がもっとも美しいのは早朝です ――朝霧が渓流の水面から立ちのぼり、梢にかかり、谷あい全体がまるで目覚めたばかりのよう。

知本を訪れる人の多くは温泉のことだけを覚えていて、早朝のあの道を見逃してしまいます。けれど本当は、湯に浸かる前の森の散歩こそ、体を真にひらく最初の一歩なのです。

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知本の温泉をどう過ごすか

  • 場所:台東市街から南へ車で約30分。「外温泉区」と「内温泉区」に分かれ、温泉ホテルの多くは内温泉区に集まっています
  • 泉質:アルカリ性炭酸泉、無色無臭、俗に「美人の湯」(出典:台東観光旅遊網)
  • 入り方:大衆の裸湯、個室の温泉湯屋、あるいは温泉ホテルに泊まって部屋の内湯に浸かる ―― 贅沢にも質素にも、思いのままに
  • おすすめの季節秋から冬がもっとも心地よく、毎年冬の入りには「知本温泉季」が催されます。夏は早朝か夕暮れの入浴がおすすめです
  • 組み合わせ方:午前は知本国家森林遊楽区を散策し、午後は湯に浸かって紅烏龍を添える。翌日は**南迴(南廻)**を通って多良(多良)、太麻里(太麻里)へとゆっくり車を走らせて
  • 二人へのひとこと:知本は道を急がない旅にこそふさわしい場所。車はチャーターの運転手に委ね、行程に余白を残すこと ―― それがここでいちばん正しい過ごし方です
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あとがき

栗松温泉(栗松温泉)は400メートルのロープ下りを求め、その引き換えに30分の静けさを差し出します。知本はちょうどその逆です ―― すべてを整えてくれていて、あなたに求めるのはただひとつ。手放すこと。

私たちはだんだん、休むことが下手になっています。休むとは、場所を変えてまたスマホをいじり、メッセージに返信し、予定を組みつづけることだと思い込んで。

けれど知本の湯は教えてくれます ――本当の休息とは、自分に何もしないことを許すことだと。百年近くを経たあの湯に身を沈め、谷あいの霧、森の匂い、そして一壺の紅烏龍の甘みに、ゆっくりと自分をほぐしてもらう。

その瞬間、ふと思い出すのです ―― ああ、くつろぐとは、こういう感じだったのか、と。

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こうした温泉に癒される旅のリズムが好きですか。私たちはそれを、ひとつの完結した旅にしました ―― 縦谷の星辰 × 温泉の癒し 3日間。縦谷のなかの鹿鳴温泉酒店を住まいとして、部屋でそのまま湯に浸かれ、上がったあとも道を急ぐ必要はありません。

次は —

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