
鹿野 · 梅花鹿公園 · ある親子の物語
鹿が、自分から歩み寄ってくる場所
奈良まで飛ばなくていい。台東の鹿野には、鹿(ニホンジカ)のほうから歩み寄ってくる草原がある ──「台湾版・小さな奈良」。
縱谷編輯室·更新 2026-05-29 · 4分で読めます
ある風景は、海を越えなければ見られないと思い込んでいる。
たとえば、鹿が自分から歩み寄ってくる草原。日本の奈良にはある。そして台湾にも ── じつは台東の鹿野に、ちゃんとある。
台湾版・小さな奈良
鹿野の梅花鹿公園は、多くの人から「台湾版・小さな奈良」と呼ばれている。
ここの**ニホンジカ(梅花鹿)**は半野生で、あなたとのあいだを隔てる柵がない。あの草原に足を踏み入れると、鹿の群れが顔を上げてこちらを見る。手に牧草を持っていれば、ゆっくりと、一頭、また一頭と歩み寄ってくる。
人を恐れはしない。けれど、まとわりついてくるわけでもない。その距離がちょうどいい ── 子どもが温かい鼻息にふれられるほど近く、それでいて、この子たちはやはりこの土地の住人であってペットではないのだと思い出せるほどには、遠い。
子どもへの、はじめての自然の授業
子どもを連れてここへ来て、いちばん心を打たれるのは「鹿に餌をやる」という行為そのものではない。子どもが生まれてはじめて、力をぬくことを覚える、その瞬間だ。
声が大きすぎれば、鹿は離れていく。動きが急すぎれば、鹿は身をかわす。子どもはすぐに気づく ── ひとつの命に近づくには、まず自分のほうがゆっくりにならなければいけないのだ、と。
「いまね、わたしの手のお草を食べたの。舌、すごくあったかかった。
」
これは、教科書では教えてくれないこと。そして台東には、それを教えてくれる草原が一面に広がっている。

道すがらの鹿野
鹿野には、鹿だけがあるのではない。
そこから車で数分のぼれば、鹿野高台 ── 毎年7月・8月に台湾国際熱気球フェスティバル(台灣國際熱氣球嘉年華)の気球が空へ舞い上がる場所だ。もう少し足をのばせば、初鹿牧場の緑の草の斜面としぼりたての牛乳、そして花鹿米公園や**親子共融公園(バリアフリーの親子公園)**の滑り台と砂場がある。
だから鹿野は、親子の一日を組み立てるのにぴったりだ。早朝に高台へのぼって熱気球を眺め、昼は梅花鹿公園で鹿に餌をやり、牧場で牛乳を一本飲む。夕方には共融公園で、子どもに最後のひとがんばりを遊びきってもらう。大人は急かされず、子どもは思う存分遊べる ── これが、鹿野が家族にくれるいちばんやさしい一日の段取りだ。
鹿野の鹿との遊び方
- どこにあるか:台東県鹿野郷。鹿野高台や初鹿牧場のすぐ近くで、台東市街から車でおよそ30〜40分
- どうふれあうか:園内で牧草・飼料を購入して餌やりができ、半野生のニホンジカのほうから近寄ってくる。ほかにウサギやモルモットなどの小動物もいる
- 入園料:手ごろな価格で、一部は園内での買い物に充当できる(実際の料金と休園日は、出発前に公式のお知らせをご確認ください。園は毎週、定休日を設けています)
- おすすめの時間帯:午前中、または夕方近くがおすすめ。真昼の日差しを避けられ、鹿の群れも活発になる
- どう組み合わせるか:午前は鹿野高台の熱気球 → 梅花鹿公園で餌やり → 初鹿牧場 → 親子共融公園、これで一日がちょうどいい
- お父さんお母さんへ:運転と段取りはチャーター車のガイドにまかせて、あなたはただ、子どものそばにしゃがんで、草を差し出すことだけに専念すればいい
あとがき
私たちはいつも、「世界レベル」の体験はずっと遠くにあると思い込んでいる ── 休みを取って、航空券を予約して、長い列に並ばなければならない、と。
けれど台東は、ずっと私たちに気づかせてくれる ── いちばんいいものは、必ずしも遠くにあるとはかぎらない。
歩み寄ってくる一頭の鹿、その鹿のためにゆっくりになろうとする一人の子ども、そしてようやく行程に追われずにすむ一組の親 ── それらすべてが、鹿野にはある。奈良まで飛ばなくていい。太平洋のこちら側の草原でも、鹿はおなじようにやさしい。
次は —
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Image credits
- Hero: 花東縱谷國家風景區管理處 · media.taiwan.net.tw · 政府資料開放授權條款 第 1 版
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